むし歯予防の「無機のフッ素」と「有機のフッ素」は無関係

先日<有機フッ素による水質汚染>について新聞に報じられ、むし歯予防に使用する「無機のフッ化物イオン」と混同する人がいるとか聞くので老婆心ながら解説します。例えば、同じ塩素でも、塩素ガス、食塩、塩酸、塩化ビニールなどあり、同一に論ずることは誤りです。

結論からいうと、水質汚染の有機フッ素化合物のフッ素(有機)とフッ化物洗口の無機のフッ化物イオンとは無関係ですので、むし歯予防のためにフッ化物洗口やフッ素塗布を行っても何ら問題はありません。

米国環境保護局EPA「有機フッ素」水質汚染に懸念

それでは、水質汚染のPFOA/PFOSとは何かというと、パーフルオロオクタン酸、又はペルフルオロオクタン酸ということです。

この有機フッ素の最近の流れは、まず、1990年代に入り、PFOAの有害性が認識され始めました。これを受けて2000年に米国環境保護局EPAでは、PFOAのリスク評価に着手。2006年にPFOAの管理プログラムを公表しています。

PFOAに関連する懸念は何か?

PFOAは環境中で非常に残留性があり、環境中及び一般のアメリカ人の血液中に非常に低濃度で見いだされており、PFOAは動物実験の段階ですが、発達障害やその他の有害な影響を引き起こすことがある。PFOAはまた、人間の体内に長い間残留するように見える。これら要素の全てを総合して、現在見出される濃度で、又は今後PFOAが環境中に放出され続けて将来達するであろう濃度で、PFOAが人間の健康と環境にリスクを及ぼすかどうかを米国環境保護局EPA は早急に調査する必要があると判断しています。

1970年代にロチェスター大学医科歯科学部のドナルド・タブス博士は、彼自身の血液サンプルの精密検査の結果、彼の血中のフッ化物のあるものは有機であり、歯科衛生の目的で公共水道水中に加えられるフッ素化合物のタイプとは無関係であることを報告しています。要するに、有機のフッ素化合物PFOAと歯科領域のフッ化物洗口や地域水道水フロリデーションFMR、CWFとは無関係と考えられます。

米国環境保護局EPA「むし歯予防の無機フッ素」を推奨

その米国環境保護局EPAは、むし歯予防のためにフロリデーション(水道水のフッ化物濃度適正化)を推奨しており、米国ではほとんどの大都市で実施し、国民の約65%が水道水のフッ素イオン濃度が適正にコントロールされたフロリデーションの水を飲用していることから理解出来るように、水質汚染の有機フッ素化合物のフッ素(有機)とむし歯予防為の無機のフッ化物イオンとは全く無関係なのです。

(東北大学歯学部田浦勝彦先生提供資料から)