会員研修会 「ここだったら行きたい!ここで働くのは楽しい♪〜予防をスタンダードに〜」
平成20年度第2回(第64回)会員研修会報告
企画研修部 角舘 直樹
「ここだったら行きたい!ここで働くのは楽しい♪〜予防をスタンダードに〜」
北海道子供の歯を守る会、社)岩見沢歯科医師会主催
平成20年11月8日 ホテルサンプラザ(岩見沢市)
講師:築山雄次 先生 福岡市 つきやま歯科医院 院長
司会:樋口俊夫 先生 北海道子供の歯を守る会
平成20年度第2回会員研修会では、「予防の達人、ヘルスプロモーションの雄」としてご活躍の築山先生をお招きいたしました。築山先生はヘルスプロモーションについて、診療室と事業所に分けて様々な理論と実践例を示されながらわかりやすく講演していただきました。
講演は、以下の要素から構成されており、㈰〜㈫の順にお話しされました。
㈰「健康ってなん?」
マズローという学者は、仕事、心理、愛、芸術を人の生きていく上での目的価値とし、健康とお金は手段価値と位置づけているそうです。そのようなことから、築山先生は「健康は目的ではなく、自分がなりたいこと、したいことを成就するための手段であり、主観的な健康観を重要視すべきである。」とおっしゃっていました。また、ヘルスプロモーションのゴールは健康ではなく、QOLであり、健康はそのための手段であるというお話をされていました。
㈫「ヘルスプロモーションってなん?」
築山先生はヘルスプロモーションのプロセスを、「住民自身がゴールであるQOLに向かって人生という長い坂道をHealth(健康)号という自転車を使って登っていく」という図を用いてご説明されていました。われわれ専門家はその支援をしていくというお話です。臨床現場においては、患者さんの主観をよく聞いてあげることが重要であるとのことでした。また、それを実践することで「こんなに聞いてもらったのは初めてです!」と患者が感激し、担当の歯科衛生士がとても信頼されたとのことでした。実は、患者さんは自分の虫歯がガンではないかと心配来院されていたようです。そして、患者さんのお話をよく聞いてあげることで自らの気付きを促すことが重要であるとのことでした。「ここで働くのは楽しい」の集大成は「帰っていく患者さんの笑顔」であり、「自分が必要とされる、役に立つ仕事って素晴らしい」と思うことであるようです。
㈫「ミラーを置いて外に出よう‐産業歯科の取組み‐」
ある造船所での職域におけるヘルスプロモーションについてのお話でした。築山先生らは事業所において、集団を対象にするのではなく部署単位でターゲットを決めて少人数に対して保健指導を行い、その結果、医療費の削減を達成したという報告でした。これは日本ではきわめてまれな事例であり、グループ学習が効果的であることが理解できました。そしてこのモデルは他の保健事業にもつながると思われ、とても大きな示唆をいただくことができました。
最後に築山先生は、ヘルスプロモーションにおいて一番必要なのは、高い志であるとおっしゃっていました。
悪天候の中、180人を超える参加者が集まり、熱心に耳を傾ける会場の雰囲気から、北海道における今後のクリニカルヘルスプロモーションの発展を期待させる講演会でした。
岩見沢歯科医師会鍵谷隆一会長よりご挨拶
180人を超える参加者
壇上の築山先生