日弁連意見書について

「NPO 法人日本むし歯予防フッ素推進会議は、日本弁護士連合会「集団フッ素洗口・塗布の中止を求める意見書」に関して、以下の見解を表明しておりますので、ご紹介させていただきます。

オリジナルは日本むし歯予防フッ素推進会議のサイトにあります。

 平成23年2月16日 

 各位 

 NPO法人日本むし歯予防フッ素推進会議 

 会長 境 脩 

 春寒の候、皆様におかれましては、ますますご健勝のこととお慶び申し上げます。 
 平成23 年1 月21 日付、日本弁護士連合会「集団フッ素洗口・塗布の中止を求める意見書」(以下「意見書」)を詳細に検討しましたところ、医学的見地から見て「誤謬に満ちたもの」であること、社会的影響が少なくないことを認識し、ここに本会としての見解を表明いたします。 
 そもそも弁護士の方々は、医学・歯学の専門職でなく、何かを主張する人の代弁者として法律の専門職といえます。今回の「意見書」では、私たち歯科保健の専門職としての立場から拝見しますと、文末に列挙されている文書、文献、またその引用原著論文の部分的な記述のみが取り上げられ、本旨や結論が無視され、「明らかな誤り」となっているところが多々見受けられました。 
 さらに、「意見書」の趣旨として、フッ化物利用の「安全性に問題がある」としていながら、個人利用やすでに普及しているフッ化物配合歯磨き剤については問題視していません。「安全性に問題ある」ならば、利用方法の如何を問わず問題とす べきであり、「意見書」そのものに矛盾が生じます。以上、フッ化物応用の「安全性や有効性に問題がある」とする根拠に乏しいことから、むしろ「意見書」趣旨の後段にある「フッ化物洗口の実施現場で強制、自己決定権が侵害されている」、と断 じていることに主張が込められているのではないかと推察されます。しかし、全国の事例から、フッ化物洗口実施施設において、90%以上が実施希望である一方、数%の未実施者がいることは、事実上自己決定権が保障されている証拠になっています。 
 願わくは、今回の話題が、全国で公衆衛生活動に専心している関係者の願い「日本の将来を背負う子供たちが世界一むし歯の少ない歯並びと健康を持って欲しい」という希望が、日本中に届けられる好機となって欲しいと考えます。 
 以下、添付文書「NPO 法人日本むし歯予防フッ素推進会議の見解」をご参照いただけましたら幸いに存じます。なお、フッ化物洗口・フッ化物歯面塗布に関する疑問、質問がありましたら、下記連絡先までお寄せ下さい。 

[連絡先] 
NPO 法人 日本むし歯予防フッ素推進会議 事務局 
〒271-0061 松戸市栄町西2-870-1 日本大学松戸歯学部社会口腔保健学講座 
TEL&FAX: 047-360-9356 

日本弁護士連合会「集団フッ素洗口・塗布の中止を求める意見書」に関する 
「NPO 法人日本むし歯予防フッ素推進会議の見解」 

1) 安全性 
 日弁連「意見書」で、フッ化物洗口・歯面塗布は「安全性に疑問ある」としている論拠を精査したところ、長年にわたり医学・歯学の専門領域で蓄積されてきた科学的知見が公正に考慮されておらず、事実誤認や不合理な論旨が多々見受けられる。 その結果、国内外の医学・歯学専門機関の見解と相違した趣旨となっている。
 1日1回または1週1回のフッ化物洗口に際して、飲み込まれるフッ化物は少量で、WHO が推奨する水道水フッ化物濃度調整(フロリデーション)で摂取されるフッ化物量に比べて5 分の1 程度と少なく、国際的に推奨されている必要栄養素の基準に満たない量である。また、フッ化物歯面塗布は年に2〜4 回と実施頻度が少なく、専 門家の責任で実施されているもので、用量用法に従えばフッ化物の過剰摂取の心配は無く、安全性が高い。実際、国際的に見ても、長年に亘りフッ化物洗口、フッ化物歯面塗布を用量用法に従って実施している地域から、有害性の報告はない。 

2) 有効性(予防効果) 
 国内外の広範囲な調査結果から、フッ化物洗口、フッ化物歯面塗布のむし歯予防効果は、時代背景やフッ化物配合歯磨き剤の普及状況によって幅があるものの、30〜80%の予防率が期待でき、今日もなお有効であるとの評価が得られている。わが国において、フッ化物洗口を40 年前から実施している地域からの報告によると、小児・学童期に経験した成人のむし歯は全国平均に比べて半分以下の結果となっている。 

3) 必要性 
 今日、わが国でも小児のむし歯は減少、12歳児でも2本以下となった。しかし、先進国に比べ依然として高く、未だ先進諸外国の約2倍のレベルにある。また都道府県格差、地域格差、個人格差も強く残っている。小児期に発生した1本のむし歯は、生涯にわたって増大し続ける負担となる。また、口腔の健康が全身の健康や生活の質に大きく係わっていることは医学専門機関の一致する見解となっている。 
 仮にここでフッ化物洗口を中止したとすれば、そのグループでのむし歯数の増大という健康被害が生ずることを認識しなければならず、さらに、当然のことながら莫大なむし歯治療費負担が増すことも容易に予測される。今後とも、フッ化物洗口をわが国で普及する意義が高い。 

4) 施設での実施について 
 学校・園等施設において行われるフッ化物洗口は、児童・教員・保護者に対して、その必要性、有効性、安全性、安全な実施方法などの説明がなされ、保護者の同意を基に実施することとなっており、学校保健管理として位置付けがなされている。 
 フッ化物洗口は国際的にも広く普及しており、禁止している国は一つもない。このような方法に沿って実施されるフッ化物洗口の普及を図るため、厚生労働省は「フッ化物洗口ガイドライン」(2003年)を示している。 

5) 最後に 
 「フッ化物を用いたむし歯予防方法は、高い安全性が認められており、最も有効な公衆衛生的方策である」との結論は、WHO 他、世界150 を超える医学・歯学・保健専門機関により合意されている。わが国においても、日本歯科医学会(1999 年)、日本歯科医師会(2000 年)、日本口腔衛生学会(2002 年)、厚生労働省(2003 年)、日本学校歯科医会(2005 年)により、本方法の有用性と安全性が一貫して確認され、表明されている。本会はこれら見解を全面的に支持するものである。