会員研修会のご報告

平成24年7月21日、北海道歯科医師会館で東北大学大学院歯学研究科相田潤准教授をお招きして、研修会が行われましたので報告致します。

相田准教授には、健康格差とフッ化物洗口“社会疫学からの示唆”についてご講演いただきました。以下にご講演の内容をご紹介させていただきます。

健康日本21(第二次)の方向性に、貧困等の様々な生活条件への配慮や健康格差の縮小が掲げられた。3歳児のう蝕有病者率をみると明確な地域格差が認められる。この傾向は複数の報告が出された20年程前から概ね変わっていない。地域ごとに高低が明確で、地域により20%以上もの格差が存在する。有病者率が低い地域も数多く存在する以上、高い地域の有病者率を同水準まで下げることは物理的に不可能なことではないはずだ。本来有病者率が低い地域においては避けられているう蝕の発生が、高い地域では避けられずに相対的に有病者率が高くなっているのである。これだけでも格差の減少に取り組むべき理由になる。また、このような格差は所得や学歴といった社会経済状態が比較的良好な地域ではう蝕有病者率が低く、そうでない地域では高いことが明らかとなっている。こうした社会的決定要因は個人の健康を左右し、健康格差の最も大きな原因となる。 

健康格差解消のためには社会的決定要因への働きかけが必要で、例えば、学校でのヘルスプロモーション、タバコの規制などが考えられる。健康に良くない社会環境で健康に良い行動をとるよりも、健康に良い社会環境の中で、健康に良い行動をとるほうが健康にとっては良く、そのためにも社会的決定要因への働きかけが重要であり、歯科でいえばフロリデーション(水道水へのフッ化物添加)や幼稚園、学校などでのフッ化物洗口など、共生への発想の転換が必要である。(中村光一)

ご講演前の相田先生

ご講演前の相田先生 
ご講演中の相田先生

ご講演中の相田先生