道民公開講座のご報告
平成26年11月21日、TKP札幌ビジネスセンター赤レンガ前にて、北海道医療大学歯学部教授齋藤正人先生と北海道上川保健所主任技師丹下貴司先生をお招きして、道民公開講座「8020歯っピーフォーラムin札幌」が開催されましたので、ご報告いたします。
齋藤先生には「なぜハミガキは必要?〜むし歯予防のための正しい歯の磨き方知っていますか?〜」と題しましてご講演いただきました。丹下先生には「北海道歯科保健医療推進計画(8020歯っぴぃプラン)って何?」と題しましてご講演いただきました。
当日は、小雨がぱらつくなか、本会会員を含む42名にご参加いただき、講演後には質疑応答が行われ、盛会のうちに終了いたしました。
歯磨きは「歯磨けよ」という言葉に代表されるように挨拶言葉になっており、正しい磨き方やその限界などは、あまり知られていません。歯みがきとは、むし歯、歯周病、口臭の原因となる細菌の寄り集まり(プラーク)をはがします。口臭は、「外国人の7割が日本人の口の臭いに不快感」という報告などもありますが、これの背景は欧米人との文化の違いがあります。日本人は体臭には敏感ですが、口臭は気にしない傾向がありますが、欧米人は口臭に敏感で、体臭を気にしない傾向があるのです。またプラークは1mgあたり3〜10億個の細菌が含まれますが、これは糞便の1mgあたり5000万〜3億個よりも多く、やはり、正しい歯磨きが大切ということが分かります。
日本人は1日2回以上歯を磨く人の割合が69%(平成23年歯科疾患実態調査)と世界で最も歯磨きをしているといわれる一方で、むし歯は、まだまだ少なくありません。たとえば8020を目指すうえで逆算すると、12歳のむし歯は1本以下、3歳では0本が必要と見込まれていますが、実際には3歳で0.6本、12歳で1.4本(平成23年歯科疾患実態調査)というのが現実です。歯磨きが普及した日本で、むし歯が十分には減らない理由は、正しい歯磨きとむし歯予防が広まっていないことにあります。たとえば、歯磨きとむし歯には関連がないこと、また甘いものとむし歯にも強い関連がないことが、あまり知られていないことが、影響しているのではないでしょうか。
エビデンスのあるむし歯予防であるフッ化物洗口を実践している佐賀県では、未実施だった1991年には3歳児の平均むし歯本数が全国で最多でしたが、小学区100%中学校50%以上に普及した現在では全国4位と、明らかな効果が表れています。このように虫歯の予防にはフッ化物応用が重要です。歯磨きにおいてフッ化物配合歯磨剤を有効に使う方法には、ダブルブラッシング法、イエテボリテクニックなどが提唱されています。
正しい歯磨きでプラークを落とすことは歯周病に対しても有効です。歯周病は歯と歯茎の境目のプラークが原因となっているため、境目にめがけて歯ブラシを当てることが大切です。また歯と歯の隙間のプラークを落とすにはデンタルフロスが有効です。デンタルフロスが普及しているアメリカでは、歯周病の患者数が、日本の約半分であるといわれています。歯周病対策では、メインテナンスも重要です。定期的に歯医者に通い、歯石除去・クリーニングを受けましょう。
北海道では、「北海道歯・口腔の健康づくり8020推進条例」に基づき、平成22年より北海道歯科保健医療推進計画「8020歯っぴいプラン」を策定し、歯・口腔の健康づくりの施策に取り組んできました。8020運動とは80歳で20本以上の歯を持とう!という運動です。実際のところ成人期の歯・口腔保健の状況として、一人平均現在歯数で評価すると北海道は11.0本(全国14.2本)、また8020達成者の割合は27.3%(全国40.2%)といずれも全国平均を下回っております。
科学的根拠のあるむし歯予防法はフッ化物応用とシーラントがあります。とりわけフッ化物応用によるむし歯予防は、世界保健機関(WHO)、国際歯科連盟(FDI)、国際歯学研究会(IADR)、欧州むし歯研究学会(ORCA)、日本では厚生労働省、日本歯科医師会、日本歯科学会、日本口腔衛生学会、その他米国、英国、カナダ等の数多くの団体・学会・機関により推奨されています。
現在北海道では、基本的目標として、フッ化物(フッ化物塗布、フッ化物洗口、フッ化物配合歯磨剤)の利用を普及させ、むし歯が原因で歯を失うリスクを低下させることを、また数値目標としてむし歯の無い3歳児を85.0%以上に、12歳児のむし歯を1.0本以下に、フッ化物洗う口実施市町村を179市町村にすることを掲げております。
質疑応答では、なぜ北海道ではむし歯が多いのか、なぜ人口の集中している札幌での対策が遅れているのかなど、活発な意見交換がなされました。(南出保)