第82回会員研修会のご報告
平成28年2月27日、北海道歯科医師会館にて、愛知学院大学歯学部口腔衛生学講座 加藤一夫准教授をお招きして、第82回会員研修会が開催されましたので、ご報告いたします。
加藤先生には「口腔バイオフィルム—カリオロジーの立場から、齲蝕予防を考える—」と題しましてご講演いただきました。
当日は、本会会員を含む28名にご参加いただき、講演後には質疑応答が行われ、盛会のうちに終了いたしました。
私たちが毎日見ている、プラーク(口腔バイオフィルム)について「構造と性質」「口腔バイオフィルムを層別に見る」「フッ素と口腔バイオフィルム」という内容で進められました。講義が始まる前に以下の資料を見てついていけるかなと心配でしたが…以下資料より抜粋…
「歯垢は、歯面に付着し、多糖体に覆われ、多様な菌種から構成されるなどバイオフィルムとしての特徴を持つことから、最近では口腔バイオフィルムとも呼ばれています。そのため、齲蝕は歯周病とともに、バイオフィルム感染症として認知されるようになりました。
口腔バイオフィルムを構成する細菌は、菌体外多糖で覆われ、免疫細胞や抗菌物質に抵抗性を示すことから、物理的に除去することがプラークコントロールの基本です。そのため、プラークコントロールといえば、ブラッシングと同義語のように使われますが、本来の役割は、齲蝕予防の立場からいえば、口腔バイオフィルムの成長や成熟を抑制することにより、齲蝕誘発性の高い状態を低い状態に変える(または、齲蝕誘発性の低い状態を維持する)ことにあります。厚く成熟したバイオフィルムでは、細菌の栄養利用性、酸素濃度、pHなどの生態学的な因子は、深度特異的に劇的に変化します。バイオフィルムの構造と関連した細菌や基質の分布に関する情報は、化学的プラークコントロールによる治療的効果やエナメル質とバイオフィルムの界面で生じるミネラルの動態を理解する上で重要です。また、バイオフィルムとそれを取り巻く外的環境との間での、細菌の栄養分やフッ化物などの薬剤の浸透あるいは細菌の代謝産物の排出などの物質移動は、その齲蝕誘発性を左右する重要な要素です。その当たりに、口腔バイオフィルムを標的とした新たな齲蝕予防手段を研究する継続的なニーズがあります。この講演では、口腔バイオフィルムのコントロールに関する最近の話題を考察する予定です。」
講演では顕微鏡写真で口腔バイオフィルムのイメージでき、細菌の分布(死んだ細菌も含む)や、口腔バイオフィルムに薬剤が浸透していく様子、ニコチンがS.mutansを活性化させる実態、細菌が死んでいるバイオフィルムがバイオフィルムの再生を促すこと、フッ素との関係等等をビジュアル的に理解することができました。
抜粋資料にあった、口腔バイオフィルムの中で繰り広げられていることを理解することが患者さんの個別性に合わせ、より適切なプラークコントロールを提供できることにつながることを再認識できました。