フロリデーション
水道水フロリデーション(Water Fluoridation)とは、むし歯予防のために水道水のフッ化物濃度を適正濃度にして供給する方法です。WHOが第1位に推奨しているむし歯予防法です。
各種フッ化物応用方法の中でむし歯予防効果が最も高い
1986年のWHOの発表では50-65%の乳歯と永久歯のむし歯の発生を予防します。
応用方法 | 予防率 |
フロリデーション | 乳歯 40~50% |
永久歯 50-60% | |
フッ化物洗口 | 永久歯 20-50% |
フッ化物配合歯磨剤 | 乳歯 40%(管理下の使用) |
永久歯 20-30% | |
フッ化物歯面塗布 | 乳歯 40-50%(定期的塗布群) |
永久歯 20-30% |
フロリデーションの利点は 平等な恩恵
水道水のフロリデーションの利点は、どのような悪い環境の子どもや大人も、身体に障害のある人も高齢者もだれもができる小さな努力で平等にむし歯を予防できる点です。
アメリカでは水道水のフロリデーションは20世紀における公衆衛生の10大成功事業の一つと評価されています。
CDC’s Morbidity and Mortality Weekly Report (MMWR) April 02, 1999 / 48(12); 241-243
http://www.cdc.gov/phtn/tenachievements/default.htm
水のフッ素濃度の知識(ppm=ピーピーエムとは 1万分の1%)
● 海水のフッ素イオン濃度 1.32±0.02ppm
● 石狩川のフッ素イオン濃度 0.1ppm以下
● 現在、日本で供給されている水道水の中のフッ素イオン濃度は0.08-0.8ppm
● アメリカでは水道水のフロリデーションは調整フッ素イオン濃度は0.7-1.2ppm
● 水道水フロリデーションのフッ素イオン濃度0.7-1.2ppmは、むし歯を予防し、かつ審美的に困る段階の中程度以上の歯のフッ素症が発現しない濃度です。
アメリカでは栄養素として供給
フッ化物を栄養素としているアメリカでは食事摂取基準が決められており、水道水のフッ素濃度0.7-1.2ppmに調整して必要な栄養素としてフッ化物を供給しています。
フッ化物の食事摂取基準
年齢 | 目安量 | 上限量 |
1~3歳 | 0.7mg/1日 | 1.3mg/1日 |
4~8歳 | 1.0mg/1日 | 2.2mg/1日 |
9~13歳 | 2.0mg/1日 | 10.0mg/1日 |
(1997年アメリカ医学研究所の食物栄養局)
※目安量:中等度以上の歯のフッ素症を発現することなく、むし歯を減らすために必要な1日の摂取量。
※目安摂取量=0.05mg/kg/day
9-13歳の上限量は10mgと突出していますが、これは全ての歯の歯冠エナメル質が完成し、歯のフッ素症が発現する時期を過ぎているためです。次に注意する慢性症状は「骨のフッ素症」ですが、1日10mg以下の摂取では発現しないことを保証しています。
世界の水道水フロリデーションの現状
その歴史は、今から60年以上前の1945年にアメリカのデトロイトの近くのグランドラビッドで開始しました。現在、水道水のフロリデーションを実施している国は61ヶ国で、約4億500万人と普及しています。
世界で61ヶ国で、約4億500万人が実施(2004年イギリスフロリデーション協会)
アジアで多いのは、マレーシア1,584万人、香港671万人、韓国537万人、フィリッピン500万人、ベトナム440万人、シンガポール410万人です。
増加する世界のフッ化物利用
実施率の国家間格差がむし歯罹患率の格差に
世界で最も実施人口の多いアメリカの現状
2005年5月現在、アメリカの人口100万人以上の全都市、50大都市中46都市と人口の約2/3が水道水フロリデーションを実施してます。1945年以来60年以上の歴史があります。
2010年までに総人口の75%が実施という目標があります。
ボストンの松坂、シアトルのイチロー、ニューヨークの松井は水道水フロリデーションで守られています。
50万人以上の実施都市
デトロイト(1967) | ボルチモア | インディアナポリス | コロンバス |
サンフランシスコ | メンフィス | ミルウォーキー | ボストン |
ナッシュビル | ワシントン | シアトル | デンバー |
クリーブランド | オースチン | ニューオリンズ | オクラホマ |
フォートワース | カンザス | ロングビーチ | シャルロッテ |
セントルイス | オークランド | アトランタ | サクラメント |
バージニアビーチ | ミネアポリス | アルバカーキー | タルサ |
ビッツバーグ | マイアミ | シンシナティ | オマハ |
フレスノ | トレド | バッファロー | エルバン(天然) |
ジャクソンビル(天然) |
人口100万人以上の実施都市
ニューヨーク(1965) | ロサンゼルス(1999) | シカゴ(1956) | ヒューストン(1982) |
フィラデルフィア(1954) | サンディエゴ(不明) | ダラス(1966) | サンアントニオ(2002) |
フェニックス(2003) |
赤字・・・100万人以上の大都市と開始年
黒字・・・50-100万人のフロリデーション実施都市
青字・・・天然にフッ化物濃度が適正な都市
ロサンゼルス浄水場のフッ化物添加装置
(東北大 田浦先生提供)
濃度はコンピューター制御管理されており、水道水のフッ素イオン濃度を0.01-0.02ppmの精度で調節しています。
アメリカの州ごとの対人口実施率
アメリカ歯科医師会 2005年
州名 | 対人口実施割合 | 州名 | 対人口実施割合 | 州名 | 対人口実施割合 |
Alabama | 82.0% | Kentucky | 99.6% | North Dakota | 95.6% |
Alaska | 57.3% | Louisiana | 45.9% | Ohio | 90.6% |
Arizona | 55.4% | Maine | 74.4% | Oklahoma | 74.6% |
Arkansas | 62.1% | Maryland | 93.7% | Oregon | 19.4% |
California | 27.6% | Massachusetts | 60.7% | Pennsylvania | 54.0% |
Colorado | 75.4% | Michigan | 86.2% | Rhode Island | 89.2% |
Connecticut | 87.6% | Minnesota | 98.4% | South Carolina | 91.4% |
Delaware | 80.9% | Mississippi | 46.1% | South Dakota | 78.0% |
District of Columbia | 100.0% | Missouri | 80.9% | Tennessee | 96.0% |
Florida | 67.4% | Montana | 23.8% | Texas | 65.7% |
Georgia | 93.0% | Nebraska | 69.5% | Utah | 2.2% |
Hawaii | 8.6% | Nevada | 69.4% | Vermont | 55.7% |
Idaho | 47.5% | New Hampshire | 42.7% | Virginia | 93.8% |
Illinois | 99.1% | New Jersey | 20.8% | Washington | 58.9% |
Indiana | 95.5% | New Mexico | 76.6% | West Virginia | 91.5% |
Iowa | 91.3% | New York | 72.9% | Wisconsin | 89.4% |
Kansas | 62.1% | North Carolina | 84.6% | Wyoming | 36.7% |
* 51州中22州で人口の80%以上が実施しています。
人口の67%が実施しているオーストラリアの現状
オーストラリアでも、むし歯予防のために水道水のフッ化物濃度を適正に調整して市民に供給しています。
1953年以来、50年以上の歴史があり国民の67%が実施しています。
シドニー浄水場のフッ化物添加装置
(瀧口 徹先生写真提供)
濃度はコンピューター制御管理されており、水道水のフッ素イオン濃度を0.01-0.02ppmの精度で調節しています。
フロリデーションを実施しているオーストラリアの平和な都市
シドニーの人口は415万人
オペラハウス
首都キャンベラ・32万人にある白亜の国会議事堂
キュャンベラ国家議事堂と4km手前は荘厳な戦争記念館
メルボルン市・349万人
メルボルンの市役所
パース・140万人のビル街
アデレード・162万人の公園
*オーストラリアの歴史については、東京医科歯科大学川口教授が詳しく山下先生のホームページに書かれています。
世界の主な水道水フロリデーション推奨団体
世界保健機構(WHO) 3回日本に実施勧告
国際歯科連盟(FDI)
アメリカ小児科学会 | アメリカ小児歯科学会 | デルタ歯科計画協会 | アメリカ科学振興協会(AAAS) |
欧州むし歯研究学会(ORCA) | アメリカ歯学研究会(AADR) | アメリカ歯科大学協会 | アメリカ歯科公衆衛生学会(AAPHD) |
英国保健省 | アメリカ歯学協会 | アメリカ健康保険協会 | アメリカ科学健康会議 |
アメリカ歯科助手会 | 国際歯学研究会(IADR) | アメリカ歯科医師会(ADA) | Mayoクリニック |
アメリカ歯科衛生士会(ADHA) | アメリカ国立科学アカデミー | アメリカ食品栄養局 | アメリカ栄養士会 |
アメリカ栄養研究所 | アメリカ臨床栄養協会 | 食品医薬品局(FDA) | アメリカ労働総同盟産業別組合会議アメリカ病院協 |
アメリカ菓子製造協会 | アメリカ看護婦協会 | アメリカ国立保健評議会 | アメリカ整骨療法師会 |
アメリカ父母と教師会議 | アメリカ薬剤師会 | アメリカ国立歯科衛生研究所(NIDCR) | アメリカ国立研究評議会(NRC) |
全米保健機構(PAHO) | アメリカ公共福祉協会 | アメリカ旅行者保険組合 | アメリカ学校保健協会 |
アメリカ農業省 | アメリカ小児歯科学協会 | アメリカ国防省 | アメリカ獣医師会 |
アメリカ環境庁(EPA) | アメリカ水道事業協会(AWW) | アメリカ青年商工会議所 | アメリカ保健所学会 |
アメリカ公衆衛生局(PHS) | アメリカ州・広域地方歯科管理官会議 | 疫病予防センター(CDC) | アメリカ州・広域地方保健官会議 |
英国歯科医師会 | 保健資源サービス局 | 英国水道水フッ素化協会 | インディアン保健局 |
アメリカ医師会(AMA) 英国医師会 | カナダ医師会 | 英国王立医学協会 | 国立衛生研究所(NIH) |
アメリカ国立癌研究所(NCI) | ニューヨーク医学会 | アメリカ公衆衛生協会 | アメリカ公共利益科学センター |
アメリカ消費者連盟 | カナダ公衆衛生協会 | カナダ事故&疾病保険協会 | カナダ歯科医師会 |
カナダ厚生省 | カナダ看護婦会 | カナダ保健連盟 |