空歯磨き

私たちは科学的な真実に従う必要があります。

今や、 WHOや専門学会の科学的な常識は、「歯磨きだけでは、むし歯予防はできない」という真実です。私たちは日本人は歯磨き至上主義から脱却し科学的な真実に従う必要があります。

WHOが奨めるようにむし歯を予防するなら歯磨きにはフッ化物入りを使用する必要があります。

日本では25年前から国民の90%は毎日歯磨きをしてきたのにむし歯が減らなかったのには理由があるのです


厚生労働省の歯科疾患実態調査によると「1日1回以上歯磨きをする者」は今から25年前の昭和56年(1981年)にはすでに90%を越えています。


1969年と1987年を比較すると、1日2-3回歯磨きする者が17から55%に増加したのに喪失歯は増えています。これは「歯磨き回数の増加」が歯の喪失原因である「むし歯」と「歯周病」の予防に有効に働いていなかったことを意味してます。

むし歯の国際比較をすると日本のみが減り方が少なかったのです

下の図の1994年WHOの国際比較のころまでの日本のむし歯予防手段は「歯磨き」一辺倒で、フッ化物入り歯磨き剤のシエアは欧米の90%以上に対して日本では40%以下でした。12歳児のむし歯経験歯数を比較すると、WHO実施勧告に従い積極的に国の政策としてフッ化物利用でむし歯を予防してきた各国ほどには日本のむし歯は減っていません。歯磨きによる対策だけでは不十分なのです。


むし歯経験歯数(DMFT指数)とは? 
D:未処置歯 
M:喪失歯(乳歯ではe) 
F:処置歯 
T:歯数 
を表し、むし歯にかかった経験の永久歯が一人当たり何本あるかの指数。乳歯ではdeftで表します。

専門家も指摘する、空歯磨き

本会顧問、北海道医療大学歯学部千葉逸郎教授、北海道大学歯学部森田教授は近年の各地での講演で「極細でも歯ブラシの毛の太さが顕微鏡で見ると歯の溝や歯間よりかなり大きいので溝の中の細菌や汚れを落とせない。そのような理由で、歯磨きだけでむし歯は予防できません」と述べています。

■毛先が歯の溝に入らない


歯ブラシの毛先は溝に入らないので、溝の中の歯垢は取り除けません。

■毛先が歯と歯の間に届かない


歯ブラシの毛先は歯間部に入らないので、歯間の歯垢は取り除けません。

■定期指導しても高校生の歯磨きの実態


一見綺麗な歯だが染め出してみたら


染め出し液を綿球で付けたところ


強くうがいした後も歯垢(プラーク・歯苔)はしつこく残っている


歯みがき10分間した後


みがき20分間した後 
実際はむし歯になりやすい溝や歯と歯の間の歯間は磨き残しも多く実際は難しいものです。

歯磨きの科学的文献による評価

現在北海道大学歯学部の森田教授と岡山大学の渡邊教授らによる1986年の複数の文献の検討では、「フッ素を使用しない空歯磨き」でむし歯予防効果があるとした疫学報告は1950年に報告された1例のみであると報告されています。

日本では、この1例の報告でキャンペーンが行われ、科学的に根拠の少ないむし歯予防手段が声高に叫び続けられたということです。その結果、世界的にはむし歯が多い国ということになっています。

このような誤りの結果責任はどこにあるのでしょうか。

北海道大学歯学部の森田教授によると、最近になっても「フッ素を使用しない歯磨き」でむし歯予防効果があるとした疫学報告はないとのことです。

国名期間平均年齢効果
Fosdic
(1950)
米国2年23
Horowitzら
(1977)
米国2年8ヶ月10-13
McKeeら
(1977)
米国3年半10-12
Silversteinら
(1977)
米国2年半12
Axelssonら
(1977)
米国4年7-13
(フッ素使用)
Agerbackら
(1978)
米国2年7
Axelssonら
(1977)
米国3年半20-71
(フッ素使用)
岩本ら
(1978)
日本2年3-5
(フッ素使用)
岩崎ら
(1983)
日本2年2

※1986年 日本歯科医師会雑誌第39巻第1号 岡山大学渡邊教授ら


フッ化物入り歯磨き剤

空歯磨きへの保健専門機関の評価

●WHO/FAO 2003年 
「フッ化物の予防的役割には議論の余地がない。一方、口腔衛生(歯磨き)とむし歯予防との間には明確な相関関係を示す強力な根拠はない」(WHO/FAO テクニカルレポートシリーズ916「食事、栄養および慢性疾患予防」)

「フッ化物入り歯磨き剤を使用した歯磨き」は第5位になっています。 「フッ化物入り歯磨き剤を使用しない空歯磨き」は順位に入っていません。

●WHO 1986年 1986年、 WHOは歯磨きのむし歯予防効果を不明確と評価しています。 
むし歯予防効果

むし歯予防方法むし歯減少率
水道水へのフロリデーション50-65%
専門家によるフッ化物塗布30-40%
フッ素洗口(学校、家庭)20-50%
フッ素配合歯磨剤20-30%
シーラント(咬合面のみ)40-99%
砂糖含有飲食物の摂取制限摂取頻度の減少に比例
ブラッシング(学校、家庭)不明確
フロッシング(学校、家庭)不明確

●米国予防医療研究班によるむし歯予防のガイドライン(1993年) 
個人的な歯科衛生(フッ化物の配合されていない歯磨剤による歯磨きやフロスの利用)によるむし歯予防方法は証拠の質はⅢ低い、勧告の強さはC不十分な根拠、と評価されています。

予防方法証拠の質勧告の強さ
個人的な歯科衛生
(フッ化物の配合されていない歯磨剤による歯磨きやフロスの利用)**

臨床経験,症例報告などに基づく権威者の意見
C
不十分な根拠だが他の要素を考慮した応用勧告

●日本歯科医学会第20回総会記念出版「歯の健康学」(岩波新書 2004年) 
「これまで、むし歯予防といえば歯磨きとされてきた。しかし、歯磨きとむし歯予防との関係は、歯周病予防ほどはっきりしていない」

新潟県燕市の事例報告

新潟県燕市の燕中学校1年生は、 4つの小学校から進学してきます。4つの小学校では異なったむし歯予防対策を実施してきました。むし歯予防対策は以下の通りです。 
・A校とB校は 歯磨き指導していない 
・C校は 年12回染め出しして歯磨き指導 
・D校は フッ化物洗口校

小学生時代のむし歯予防対策とむし歯数の比較

小学校
歯磨き指導+
歯口染色/年3-41123-4
歯科検診/年111-22
フッ化物洗口+

A, B:対照校 C:歯磨き指導校 D:フッ化物洗口校 
筒井、境ほか 口腔衛生誌 33(1): 79-88, 1983

生徒がどこの小学校出身者か歯の検診者に知られないように検診して、DMFS指数の比較をしました。

 
* DMFS指数(むし歯経験歯面数) 
D:未処置 M:喪失 F:処置 S:歯面数

結果は、歯磨き指導してないA校とB校出身者と年12回染め出しをして歯磨き指導したC校出身者との間に差が有りませんでした。フッ化物洗口校だけがむし歯が少なかったのです。盲検での検診結果です。

「空歯磨きでは、むし歯予防はできない」という科学的な真実に従う必要

今や、 WHOや学会の常識は、「歯磨きだけでは、むし歯予防はできない」という科学的な真実です。私たちは日本人は歯磨き至上主義から脱却し科学的な真実に従う必要があります。歯磨きにはフッ化物入りを必ず使用し、フッ素を洗い流さないようにすすぎは軽く2回までにしましょう。

でも、むし歯予防の目的ではなく他の目的で歯磨きは必要

*歯磨きは歯周病の予防に有効 
*口臭予防などエチケットに必要 
*誤嚥性肺炎予防のために必要

歯磨きについての注意事項

●口腔粘膜損傷事故に注意 
ある病院の口腔外科外来では、幼児の口腔粘膜損傷の原因の1番が歯磨きです。歯磨き時の転倒によ る口腔粘膜損傷事故に注意しましょう。歯ブラシをくわえたままでふざける子供には注意したいものです。 
●歯の磨耗、歯肉の損傷 
強すぎるブラッシング圧による歯の磨耗、歯肉の損傷があるので、歯科医院で正しい指導をうけましょう。