北海道子供の歯を守る会 第99回会員研修会 開催報告
令和5年7月8日(土)に北海道歯科医師会館において北海道子供の歯を守る会第99回会員研修会を開催致しました。新型コロナウイルス感染症への感染予防に配慮し、YouTube Liveによるオンライン配信となりました。会場内参加者15名、オンライン参加者12名に御参加いただきました。
御講演の内容については、昨今の歯科矯正の高まる需要の中から「カリエスリスクの高まる矯正装置を使用することのジレンマ」をテーマに北海道大学歯学部を御卒業され同大学病院歯科臨床センター矯正専門外来、テキサス州立大学ヘルスサイエンスセンターリサーチフェローなどの経歴を持ち、30年以上に渡り地域の歯科矯正における臨床の現場を支えておられるおかもと矯正歯科クリニック院長岡本亨先生をお招きし、歯科矯正専門医の学術的な見地や臨床の御経験から、矯正とカリエスリスクについてを中心に御講演頂きました。
講演 カリエスリスクの高まる矯正装置を使用することのジレンマ
講師 おかもと矯正歯科クリニック院長 岡本 亨 先生
要旨
歯科疾患実態調査の概要によると1993年から2022年までの年次推移は一人平均DMF歯数(DMFT指数)の減少や8020達成者割合の増加しており、さらに20%が矯正歯科治療の経験があるとされている。8020達成者の歯に見られた咬合状態については、開咬なし、反対咬合なし、上顎前歯部のシビアな叢生が少ないという特徴がある。歯科矯正の観点から残存歯数についてどの程度歯科矯正治療が寄与しているかということについて考えなければいけない。
矯正歯科の領域で、早期治療が必要なケースとして上顎前突があげられる。日本矯正歯科学会のガイドラインで上顎前突を早期に治療することで、前歯の外傷リスクは低減できるというエビデンスがある。また成長期の骨格性下顎前突に関しては、上顎前方牽引装置が強く推奨されており、チンキャップは現在、推奨されていない。さらには歯科矯正を行う上で患者一人一人のオーラルハイジーンや社会生活、様々な条件を考慮の上に慎重に診断していく必要がある。
歯科矯正で使う材料については、機能性材料を使った最小限のリン酸エッチングを用いたボンディングを取り入れている。選択基準の一つとしてフィラーにフッ素が配合されていたり、装置の脱着の際に、エナメル質の損傷を抑えるため、スチールバーなど除去できる比較的柔らかめ材料である点などから選択している。
歯科矯正の診断等で使われる印象採得については、光学印象を採用しており、従来の比べて、時間の短縮や、視覚的に患者説明できること、管理のしやすさなど様々なメリットがある。そういった上位互換と考えうるデジタル技術を取り入れながら、三次元的に捉えることで外科矯正や様々な臨床の場で活用している。