会員研修会 「食育」のススメ〜心と体の健全な発育のために〜 中尾卓嗣先生 凄く暑い日に凄く熱い講演
場所 2008年7月6日(日)13時〜16時 北海道歯科
講師 ボランティア食と環境教育アドバイザー 中尾卓嗣先生
平成20年7月6日の北海道子供の歯を守る会会員研修会では、「食育」をテーマとしてボランティア食と環境教育アドバイザーである中尾先生をお招きいたしました。講師の中尾先生は、人間は、自然界の動物と同様に、生態系の一部であり、自然を無視して生きていくことはできない、ということを、食を通じた様々な事例・具体例を示されながら語ってくださいました。以下に要旨を示します。
・玄米一粒の重さを想像できますか?このようなことでも、子供には、答えをただ与えるだけではなく、自ら考させることが大切なのです。
・子供たちの集団遊びが減少し、遊びの中にある社会勉強の側面を学ぶ機会が失われてきています。このような食や起床時間、交友関係といった生活スタイルの急激な変化が健康にもたらす影響は、決して限定的なものではなく、現在の子供たちは親より体格は立派でも身体能力は劣ってきています。
・肉食動物や草食動物、魚食動物などの糞からわかりますように、食性と歯には深い関係があります。人間は歯種(前歯・犬歯・臼歯)のバランスから、野菜と穀物中心の生活が基本なのです。コンビニ弁当中心の食生活は、確かに便利ですが、野菜の摂取量が足りないのです。
・子供が好むおやつは、味が濃く、柔らかく、脂肪分量の多いという特徴があります。子供が脂肪分を好むのは、動物として高カロリーな栄養源に引きつけられていることの現れですが、このような脂肪摂取過多は倹約遺伝子を持つ日本人には、内蔵脂肪の堆積をもたらします。インスタントでもよいからダシの香り中心の食生活(和食)を刷り込みましょう。
・アパレルショップにあるようなマネキンは日本人の平均的体型とは差があり、マネキンの体型を目指すと、栄養失調となります。ミロのヴィーナスでさえ、身長160cmとするとウエストは73cmです。母親の栄養失調は、子供の胎内での発育不全を通じて一生の健康に影響をもたらします。マネキンを目指すダイエットは、やめましょう。
・ピーマンに入っている白い種。これは芽を吹くことはできません。なぜでしょうか?ピーマンは成熟を迎えると赤く実ります(パプリカじゃありませんよ)。でもこれが店頭に並ぶことはありません。なぜでしょうか?ピーマンは種を成熟させるまえに収穫されるからです。ピーマンは苦く子供に嫌われますが、なぜ芽を吹かないのか、収穫されずに成熟した赤いピーマンの存在と比較させながら考えさせると、子供たちはピーマンの苦みを忘れピーマンを口にするようになります。食べ物はただ大切にしなさいというのではなく、なぜ大切なのかを子供たち自身に考えさせる機会を与えることが大切なのです。
・旬の野菜は、おいしい、たくさんとれる、安い、栄養価が高いといったさまざまな利点がありますが、現在の気候変動をふまえると生産に必要なエネルギーが少ないというメリットがあります。
・法隆寺は、斑鳩の森でとれた木で建築されています。寺の南側の木には、南斜面の木を、生えていたときと同じ方向に向けて利用しているそうです。そうすることで、木を長持ちさせるのだそうです。これは建築における地産地消と呼ぶこともできるでしょう。
・食における地産地消は、土地でとれたものをその土地で食することで、新鮮で、栄養価が損失の少ない状態でいただくことができます。またそれだけではなく、環境への負荷も少ない(フード・マイレージ=食品の輸送距離が小さい)というメリットがあります。
・子供は、家族の食べるものを見てどの食べ物が安全なのかを学びます。この繰り返しが食生活・食文化として定着してきているのです。
・子供には、運動と我慢をさせて、ソクラテスが「最上のソース」と呼ぶ空腹を覚えさせた上で食事を与えることで「我慢の後には褒美がある」という躾の原点を身につけさせることができるのです。
・電気工学の基礎を作ったファラデーは「この試験管にある一滴の液体の成分は、科学的に分析すればただ少量の水分と塩分であるかもしれない。しかし、この一滴の液体は、科学では分析できない尊い深い愛情のこもった母の涙である。そのことがわからなければ、この液体のことがわかったとは言えない」というような言葉で、心で見る価値の大切さを表現しました。
・日本人全員が一粒のご飯を残すと、0.02gx1.3億=2.6t=30kgの米袋87袋分の残飯となります。現在地球では8億人が飢餓に苦しみ、5秒に1人、飢餓のため失われる子供の命があります。
中尾先生は、遠路はるばる和歌山より、7日からの洞爺湖サミットもあり交通機関の混雑するなか、高級作務衣を身にまとい来道され、前日の夜より食育にとどまらず、生活スタイルや子供の環境について、さまざまな想いを語られ、帰っていきました。折しも7月の5日6日は最高気温が30度31度と真夏日の熱気に包まれた札幌ですが、多数の参加者を前に、先生も負けじと熱い想いをぶつけられたのではないかと思います。