道民公開講座のご報告

平成24年4月21日、アスティ45にて、北海道保健福祉部健康安全局地域保健課地域保健グループ丹下貴司主任技師と北海道大学大学院歯学研究科八若保孝教授をお招きして、道民公開講座が開かれましたので報告いたします。

丹下主任技師は、北海道の口腔保健とフッ化物洗口の普及状況について解説されました。北海道は平成22年度において、1人平均むし歯本数が1歳6ヶ月児で全国41位、12歳児で46位(平成23年度では40位)、成人が歯を失い始める年齢は全国平均と比較して10歳早い、8020達成者割合は、全国平均の6割未満、とのことです。またフッ素洗口の普及につきましては、北海道8020推進条例の施行により、平成22年4月に28市町村であったのが現在90市町村まで広がっているとのことでした。 

八若教授には、お母さんから見たお口の健康と赤ちゃんからみたお口の健康について、ご講演いただきました。以下にご講演の内容をご紹介させていただきます。

女性は妊婦さんになると、肉体だけではなく、子供を授かった高揚感・マタニティーブルー、パートナーとの関係など精神的にも変化をします。今年は10年ぶりに母子健康手帳が改正され、このようないろいろな変化の書き込みが可能になりました。また北海道歯科医師会では母と子の健口パスポートとして、母子健康手帳では補えない歯科的問題点に焦点を当てた手帳も市町村へ配布しています。 

妊婦さんの栄養については、いまどきは、やせすぎの妊婦さんが増加しており、切迫早産・早産・低出生体重児を分娩リスクが高くなってきています。厚労省・農水省の食事バランスガイドを目安に、食塩を少なく、カルシウムや鉄の豊富な食事を意識することが大切です。妊婦さんのお口の中のトラブルには口腔衛生の不良による妊娠性歯肉炎、不良な詰め物やむし歯の影響する妊娠性エプーリス、ビタミンB不足やホルモンバランスが影響する口内炎などがあります。妊婦さんは、おなかの赤ちゃんの成長にともない胃が圧迫され、一回の食事量の減少と食事・間食回数の増加により、口腔衛生が不良になりがちです。たばこやアルコール、薬や病気が、胎児に影響して、早産や低出生体重児のリスクを高めるといわれていますが、最近進行した歯周病から放出される炎症物質もこれらのリスクを高める可能性が指摘されています。妊娠中はバランスのとれた食生活、定期的な健診や歯石の除去などお口のケアを受けることが大切です。また出産後は授乳中の服薬にも注意しましょう。 

赤ちゃんからみたお口の健康では、授乳時に問題となる先天性歯(リガ・フェーデ病)があります。これは哺乳障害の原因となり、脱水や栄養障害を招くほかに、母親の乳首に創傷をつくるため、治療が必要になることもあります。また口唇裂・口蓋裂も哺乳障害の原因となります。摂食機能が発達し、吸綴(吸いかつすすること)、捕食(口にくわえること)ができるようになると、離乳・卒乳の時期になります。厚労省は1歳6か月を目安にしていますが、小児科・小児歯科では2歳までを目安としています。母乳の摂取は、赤ちゃんにとって最高の精神的満足であり、離乳時期の延長傾向が認められてきていますが、2歳6か月以上になるとう蝕が多くなるため注意が必要です。 

赤ちゃんのお口の清掃は、ガーゼでの拭掃、ガーゼになれてきたら小さい歯ブラシ、奥歯が生えてきたら小児用歯ブラシへと段階的に歯ブラシへと慣れさせながら行います。むし歯の予防には、ミュータンス菌の減少、歯質の強化、糖分のコントロールが重要です。子供へのミュータンス菌の伝播は遅いほど虫歯予防には有効ですが、スキンシップとのバランスが大切です。フッ化物は歯質の強化・再石灰化の促進だけではなく、最近への作用もあり、生育抑制・酸酸性を抑制しむし歯を予防します。シーラントにより小窩裂溝を封鎖し、最近侵入を防止することができます。またフッ化物の徐放による予防効果も期待されます。

八若教授の講演後には、活発な質疑応答が行われ、道民公開講座は、盛会のうちに終了いたしました。

道民公開講座後には、総会も行われ、堅田前会長の退任と名誉会長への就任、葭内新会長の選任など、重要な案件があったものの、スムースに取り決められ、幸先よく平成24年度の運営が執り行なわれました。