第81回会員研修会のご報告
平成27年9月26日、北海道歯科医師会館にて、医療法人おく小児矯正歯科の奥猛志先生をお招きして、第81回会員研修会が開催されましたので、ご報告いたします。
奥先生には「根拠に基づく齲蝕予防 リスクが違えば指導も変わる」—ステファンカーブで一人ひとりのう蝕リスクを「見える化」—と題しましてご講演いただきました。
当日は、本会会員を含む27名にご参加いただき、講演後には質疑応答が行われ、盛会のうちに終了いたしました。
講師の奥先生
会場の様子
9月26日北海道歯科医師会館で開催されました北海道子供の歯を守る会第81回会員研修会に於いて「根拠に基づくう蝕予防 リスクが違えば指導も変わる ?ステファンカーブで一人ひとりのリスクを「見える化」」との題にて鹿児島市で開業されている医療法人おく小児矯正歯科院長の奥猛志先生に講演していただきました。
おく小児矯正歯科ではオリジナルキャラクター「デンタマン」を掲げデンタランドという設定のもと、(1)リスク検査によるう蝕予防(2)恐くない治療(3)きれいな噛み合せの3つを医院の柱としています。院内には託児室(非常勤の保育士2名)を備えて子育て支援また除菌水やスリッパ廃止ほかの取り組みによる院内感染予防にも力を入れています。患者さまIDによる情報の一元管理を行い「保健指導」=「ステファンカーブの改善」と捉えて独自開発のう蝕食予防ソフト「ステファナリシス」を駆使した「リスクの見える化」により患者さんの口腔内環境の改善に取り組んでいます。
ステファナリシスは食事アンケートや各種酸産生検査によるスコアを入力して患者さんのステファンカーブを1152パターンの中から選び出すものです。スコアは(1)エナメル質の臨界pH(年齢、フッ化物使用状況)(2)ステファンカーブの最高値(オーラルpHテスト)(3)ステファンカーブの最低値(カリオスタット)(4)ステファンカーブの傾き(CAT21)(5)ステファンカーブの波の数(飲食の回数)から構成されます。私もステファンカーブを患者さんの指導に使っていましたがそれは一般的なモデルにすぎず、患者さんが本当に関心を持つのは自分自身のステファンカーブでしょう。ステファナリシスの様に自分自身のステファンカーブ(計算上近似したものであっても)を提示され「フッ化物歯磨剤を使い、間食を1回減らしたら1日の脱灰の割合が40%から15%に減りますよ」などと具体的な行動変容の方法と改善結果を示される事でモチベーション向上に大きな効果が得られると思いました。おく小児矯正歯科でもリスク検査を行った患者さんは1年後の定期健診受診率がリスク検査をしない患者さんと比較して2倍以上の成績を示したとの事です。今回の講演は多くの示唆を私に与えてくれました。(矢口敦久)