フッ化物
むし歯予防のフッ素発見のきっかけ
「歯のフッ素症」を予防する研究からむし歯予防のフッ化物利用の歴史が始まりました。
フッ素の研究は、アメリカのカリフォルニア州のコロラド川の流域に発生していた「重度の歯のフッ素症(斑状歯)」をいかに予防するかという害の予防の疫学調査研究から始まったことに大きな意味があります。
歯の表面のエナメル質に白斑や白い縞模様が出来る「歯のフッ素症(斑状歯)」が飲料水中のフッ化物濃度が高い地域に流行するのが判ったのは1931年に化学者チャーチルらによる水の分析によります。
また、このような歯は「むし歯に罹りにくい」こと、約1.8ppm以下では「問題となる段階の歯のフッ素症」は発生しないことが判りました。
歯のフッ素症(斑状歯)の基礎知識
フッ化物の慢性中毒は、「歯のフッ素症」と「骨硬化症」です。最も少ないフッ化物の摂取量で発現する慢性中毒は「歯のフッ素症」です。「歯のフッ素症」が出ないということは、何もそれ以外の影響はないということです。
また、知っておきたいことは、水のフッ化物濃度が0.1ppmなどの低い地域でも、「エナメル斑といわれるエナメル質形成不全の歯」が出現するということです。その歯は「歯のフッ素症」と区別が難しく、原因は60種類以上もあるといわれています。
福岡歯科大学筒井昭仁助教授は上図のように分類しています。
歯のフッ素症は、3つの条件が重なったときにのみ現れるエナメル斑(エナメル質形成不全歯)の1種です。3条件が一つでも欠けると現れません。
歯のフッ素症は
①過量のフッ化物を
②歯冠のエナメル質を形成する時期に
③長期間摂取する
3条件が重なった時のみ発現
フロリデーションなどむし歯予防のフッ化物利用で3条件が重なることはありませんので、いかなる「歯のフッ素症」も発現しません。
歯のフッ素症は5段階あります
疑問型(Questionable)
非常に軽度(Very mild)
軽度(Mild)
中等度(Moderate)
重度(Severe)
中等度(Moderate)と重度(Severe)の段階は審美的に問題がありますが、むし歯予防のためのフッ化物利用で発現することは全くありません。
また、軽度以下は審美的には「美しい歯の部類」に入ることが調査報告されています。また、症状は進行せず機能的な問題はありません。それは氷の中に一旦できた気泡の大きさが変わらないと似ています。下図のように進行するむし歯と比較することも重要なことです。
病気ではない歯のフッ素症
以下の中等度、重度の歯のフッ素症は、フロリデーションなどむし歯予防のフッ化物利用では発現する心配はありません。
病気としての歯のフッ素症
現代の日本では、歯のフッ素症よりもむし歯による見た目の変化の方が、多く認められます。
進行するむし歯
ご注意:アメリカやオーストラリアでの水道水のフロリデーション実施濃度0.7-1.2ppmで実施される場合には、 このような重い症状の「歯のフッ素症」は決して現れることはありません。
何故なら、このような重い症状の「歯のフッ素症」が現れない濃度に正確にコンピューター管理されているからです。また、むし歯予防のためのフッ化物洗口法やフッ素塗布法、フッ化物入り歯磨剤では、水道水のフロリデーションから毎日取るフッ素量の5分の1程度かそれ以下であることからさらに全く心配いりません。
フッ化物利用法と歯のフッ素症の関係は?
むし歯予防に利用されるフッ化物摂取量では発現することは決してありません。
水道水のフロリデーションとの関係
水道水のフロリデーションは、審美的に困る段階の歯のフッ素症が発現しない濃度約1ppm(1万分の1%)で実施されています。(0.7-1.2ppm)
フッ化物の洗口法との関係
4-14歳の間に実施するフッ化物洗口では、フッ化物摂取量がフロリデーションの約1/5以下なのと、審美的に関係のある前歯が洗口開始の4歳の時にすでにエナメル質が完成していることから、時期的にも「歯のフッ素症」は発現しません。
フッ化物入り歯磨剤との関係
フッ化物入り歯磨き剤では、使用後口の中に残るフッ化物摂取量(約0.2mg)がフロリデーションの約1/5以下なので「歯のフッ素症」は発現しません。
フッ化物塗布との関係
フッ化物塗布では、フッ化物摂取量が年数回というように断続的なので「歯のフッ素症」は発現しません。